2012年4月7日土曜日


仏の教え
DHARMA
Teachings of Buddha



Vol.1 摩訶般若波羅蜜多心経

私が般若心経に、何らかの特別な意識を持って接したのは25年ほど前の事だ。

当時ソロアルバムの制作中で、体力作りと称しウォーキングを始めたのがきっかけだった。

5キロほどのコースの中に、まずは神社に立ち寄り二拝二拍手一拝と云う動作を加えてみた。

これが案外心地好く、ウォーキングがワンランクアップグレードする気がした。

そして次に思いついたのが、般若心経を唱えながらウォーキングをすると云うアイデアだった。
般若心経を唱えながらウォーキングをすると云う事は、
般若心経を暗記しなければならないと云う事だ。
早速、義姉が持っていた般若心経の解説本、上下巻を借りた。
エイトマンの作者、桑田次郎さんが書いた、勿論漫画だ。
これまで解説本は数多く読んできたが、この桑田次郎さんの解説本は
漫画である分、他のモノよりは楽しく解りやすく般若心経に触れる事が出来たと思う。
結局この時はレコーディング終了と同時に暗記作業も終了し、半分程度憶えるに留まったが
般若心経の全体像には微かに触れたような気がした。

そしてこの後、般若心経と再会する事になるのはその18年後、
妻の七七日の法要の後だった。

年も明けたと云うのに、夕暮のベランダから沈む夕陽を眺めるだけが日課だった。
時々立ち寄る本屋のレジの横の特等席に、
手に取りなさいと云わんばかりに、高々と積み上げられた本
立松和平訳「般若心経」だった。
立松和平さんのあの微妙な訛りが聞こえてくるようで、般若心経がとても身近に感じられた。

そして私は、ついにこのお経をクリックしてしまい、
ネット世界の広がりのように、釈迦の教えの世界へと深交した。


釈尊を一人の人間としてとらえるならば、
彼は偉大な哲学者であり、天才的な思想家であり、豊かな表現力を備えた詩人であると云える。
そしてその「教えの言葉」は美しく完成され、弟子達に優しく歌い語られたのだろう。

私の旧友に3人のヒンズーの僧侶がいるが、
彼らの教えはそれぞれがひとつの楽曲になっている事が多い。
その事から察すれば、釈尊の「教えの言葉」は美しい旋律でもあり、
その歌声は人々を魅了したに違いないだろう。
哲学者、思想家、詩人、さらに釈尊を憶い描くならば
歌手と云う項目も、私は是非付け加えてみたい一項目だと思う。

そしてさらに妄想を膨らませるとすれば、釈迦族の王子として生まれて来たと云う事実。
王はおそらく国で一番美しい女性を妻とするだろうから、その子供釈尊はかなりのイケメンで、
古くからの土着的なヒンズーの教えなども取り入れながらオリジナル曲を次々とヒットさせた、
実は彼は才能あふれるシンガーソングライターだと云う事になる。
祇園精舎は日比谷野音で、弟子達はこのロックスターの大ファンで熱烈な追っかけだったと云う事だ。


釈尊は「瞑想」と云う画期的な方法により「空」を体感した。
この宇宙に存在するすべてのものが、粒子により構成されていると云う事実は
今では誰もが知る事が出来る。
しかし釈尊は、遥か2500年以上も前に、この事実を「瞑想」により体感してしまった。
私なりの言葉で表すなら「自己の内なる宇宙」を見い出したと云う事になる。

私も貴方も路傍の石も、粒子のレベルに達すれば皆同じ宇宙の塵のようなもので
何ひとつ異なりはしない。
そしてそれら一つ一つの粒子に自我などは存在しない。
自我などが存在するはずも無い。
だがやがて自我が芽生え、その粒子は私となり貴方に成長してしまう。
私となり貴方になると云うところから、すべての迷いと苦しみが生まれる。

自己の内なる宇宙を体感し、宇宙と一体化した状態が「空」で
般若心経はこの時の状況を綿々と解説している。
これは釈尊の教えの根底にあるものだ。
要するに、「人間も野に咲く一輪の花も同じ一点の命」と云う事実にたどり着く。


自我を確立し自立した「個体性」が関係仕合い発展し、この社会は形成された。
より良いとされる社会を築く為には合理性が最重要視され、
「人間も野に咲く一輪の花も同じ一点の命」などと云う非合理的な「全体性」は
社会の発展と拡大には逆行する、オカルティズムだとされ排除されて来た。
合理主義が科学の発展を促し、当たり前のように地球を覆いつくし、
それまで神と呼ばれたものに取って代わろうとして来たが、
その合理主義と科学は、この世の謎や苦しみをどれだけ解き明かし、
人々をどれだけ幸せにして来たのだろうか。
豊かな社会を作ろうとしたその思想は、どれだけの戦争と貧困を生み出したのだろうか。


仏の教え、すなわちお経は八万四千巻あるとされている。
幸い私はどの派閥にも宗派にも属さない、自由気ままな信心(しんしん)だ。
言い換えれば、何の制限も無く釈尊の教えに触れる事が出来る。

般若心経の作曲及びレコーディングにはおよそ3ヶ月の時間を要した。
和訳、英訳、映像の制作編集等を含めると半年ほどの月日が過ぎた。
第1巻目のレコーディングで試行錯誤の繰り返しだったと云う事もあって、
時間がかかり過ぎたのかもしれない。
ここからは3〜4ヶ月毎に1巻を完成させるとして、10年でなんとか40巻。
目標は108巻のレコーディングだ。80を有に越える年齢となる。
この仕事は音楽に支えられ、釈尊の教えに救われ、ここまで生きて来られた私の最後の仕事だ。
釈尊の素晴らしい哲学を、私の持つ「音楽」と云う表現形式で
一人でも多くの人に伝えられるとしたら、この上のない幸せだ。


釈尊の大ファンとして熱烈な追っかけとして、また一人の「信心」として
私は釈尊の袈裟の裾をしっかりと握りしめていたい。
そして私が旅立つ朝、一瞬と永遠が重なり合う至福の時、
釈尊は微笑み、私の手をそっと握り返してくれるだろう。
おそらくこの世に生を受けた者の至高の幸せとは、この事を云うのだろう。
だが残念な事に、釈尊が私の手を取ってくれたかどうかを、皆さんにお伝えする事は決して出来ない。

それは私に与えられた、ほんのささやかな楽しみだからだ。

  2012年 春   鶯の丘スタジオにて  

     仏の教え  Vol.1 摩訶般若波羅蜜多心経 リリースにあたり    

                                 柳澤瞳生拝



Vol.1 摩訶般若波羅蜜多心経

Maha prajna-paramita-hrdaya
Great teaching of Buddha--to reach the ultimate truth.
偉大なる最高真理への仏の教

歌、作曲、編曲、プログラミング、ミキシング、コーラス/撮影、編集
柳澤瞳生

9 件のコメント:

  1. mp3ファイルのご要望、シェア等ありがとうございます。

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  2. はじめまして。伏木さんのブログから訪問しました。般若心経の心地よさに本当に大きな宇宙を感じますね。ipodに持ち歩きたいなぁなんて思いました。

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    1. kazさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
      僕たちが普段馴染んでいるお経は1拍1音のものがほとんどです。
      山奥の寺で修行中の若い僧達が太鼓に合わせ唱える般若心経もまた心に響きますが、
      僕はipodで例えば満員電車の中でも楽しめるかもしれない般若心経創ってみたかったのです。
      確実に心地好く違う世界に行けると思います。
      kazさん、mp3ファイルをメールでお送りしますので、ホームページのメルアドで是非ご連絡下さいね。
      ありがとうございました。

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    2. 柳澤様

      すばやい返答ありがとうございました

      通りすがりから親切に回答していただいて本当にうれしく思います

      メアドが見つからないのでここに

      kazulsd2002@yahoo.co.jp

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  3. nice・・! very good.!!  曲もリズムもいいし、音もいい、ドラムも・・・、お経をコンサート感覚で楽しく聞かせてもらいました。
     般若心経、大変勉強になりました、これ・法事に使うヒト いるかもね、
    myway

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    1. mywayさん、ありがとうございます。
      「法事で使う」それいいですね。
      これから宗派にとらわれずレコーディングを続けますから、
      そのうち使いたいと云う人も現れる可能性ありますね。そうなったらとても嬉しいです。
      そんな事考えても見ませんでしたが、mywayさんのコメントでレコーディングが楽しみになりました。
      ありがとうございました。
      只今、「阿弥陀経」研究中です。

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    2. 僕はもちろん葬式で使います。

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  4. 自己の内なる宇宙を体感し、宇宙と一体化した状態が「空」

    自分が漠然と感じてきたことがハッキリと文字になっていてドキっとしました。
    私も勉強したくなりました…般若心経

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    1. Viola Animaさん、コメントありがとう。
      そうなんだよ。お釈迦様は瞑想と云う方法でこの状態にたどり着いたんだ。
      お釈迦様ってすごいだろ!
      「空」すなわち「無我」の状態と云う事だ。これが仏の教えの根本なんだね。
      お経は勉強すればするほど面白いよ。

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